ブランドを立ち上げたいという思いが強くなり、アパレルブランドを退職して「見切り発車でブランドを始めてしまい、思った以上に費用がかかることに驚いた」と当時を振り返る及川さん。それまで貯金してきた100万円で立ち上げの準備を進めていくと、会社設立の手続きにかかる費用や生地の購入代、展示会に出展するためのサンプル製作の費用などがかかりました。
「展示会の出展となると、会場を借りたりするなどして大体120万円くらい必要で。さらに発表するために服のサンプル製作をするわけですが、サンプル代って量産時に製作する服の3倍くらいのコストがかかるんです。工場が通常5,000円で仕上げられるものが、サンプルだと15,000円になります。量産時と異なるので、1着が高くなるわけです。だから、100万円って一瞬でなくなるんですよね(笑)」。THURIUM立ち上げ時は、少しでもコストを抑えるためにサンプルの服を自分で縫製するなどしてなんとか乗り越えたといいます。
そうして2シーズン目に入り、合同展示会に出展したときのこと。さまざま企業やバイヤーが訪れる販路拡大のきっかけになる場で新たなご縁があり、少しずつ売上が伸びて他社にも知ってもらえる機会が増え、少しずつブランドが成長していきました。
そして、縁あって株式会社ニコルの展開するカジュアルフェミニンを主体とした老舗ブランド「BOUTIQUE nicole(ブティックニコル)」のデザイン依頼をもらい、同社による「旅」をテーマにした女性向けの新ブランド「WALDO(ウォルド)」の立ち上げを任され、コンセプトづくりから服づくりまでを行っています。
自身のブランド展開だけではなく、老舗ブランドのファンの心を掴むデザイナーとして、ブランドの思いをカタチにする活動もしながら、及川さんは活躍の場を拡げています。
