奥深いデニム① 縫い方で時代がわかる!?
デニムの縫製は、かつてミシン1台で全ての工程を行っていた時代もありましたが、現代では裾上げなど特定の縫製に特化するミシンを使い分け、複数台使用してデニムを縫っています。
縫い方を見ると、デニムがどの年代でつくられたものなのか大体わかると重本さんはいいます。例えば、アメリカを拠点とするジーンズメーカーの『Levi’s(リーバイス)』。ジーンズに詳しくない人でも一度は聞いたことがあるであろう有名メーカーですが、時代背景がわかるようなモデルを展開をしていて、モデルチェンジをする移行期などは縫い方にも違いがみられるので、年代がわかるのだそうです。
奥深いデニム② 多数の糸を駆使した、色再現
工房の作業スペースの壁面には、多数のカラフルな糸が並んでいます。一見、同じ色に見える糸もあります。お直しやリメイクは、元のデニムの色味を再現するために5~6種類もの糸を駆使して色再現を行っています。元の生地に馴染ませるための調整は、「正直、感覚によるところが大きい」と重本さんはいいます。「印刷業界などで用いられるCMYKという色表現の手法は、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの四色を混ぜて幅広い色を再現していくものです。デニムも同様に、どのように糸を足していくと生地に合った色再現ができるのかを考えていきます。ものによっては、7色程度使用することも。組み合わせる糸の種類が多すぎると硬くなってしまうので、最小限の糸で仕上げていくようにしています」。

また、糸は色の種類だけでなく太さも種類があるようです。「縫う箇所に応じて太さを変えたりします。6番手、20番手、30番手というように、同色でも各種太さの異なる糸を揃えてどのようなデニムにも対応できるようにしています。これまで、糸だけで数百万円費やしているんじゃないですかね(笑)」と重本さん。依頼に合ったリメイクやお直しを追求するために、複数の縫製糸メーカーから糸を仕入れ、糸を使い分けています。「海外や東北、関東、中部、中国地方など糸の特性を生かしています。国内だと岡山県にある『烏城(うじょう)物産』さんはヴィンテージデニム用のマニアックな糸も制作していることで有名ですね。
重本さんは、一つひとつの依頼に徹底して向き合って製作しています。